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2006年6月22日 (木曜日)

第4回

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 父親の通夜も無事終わり、母親もどうにか自覚を取り戻し、前の日常が又始まった。違うことと言えば家の周りを私服の警察が彷徨いていることだった。
父親の死には不振な点が有るらしい。一度は心筋梗塞と判断され家に帰ってきたのではあったが、その後の二度目の解剖でその不振点が発見された。
 なので父親の遺体は49日を迎える今になっても火葬されず警察の元に居る。身体を切り刻まれどうにか人型を保っているだけの人形となって・・・。
 その遺体から有る物が発見されたのであった。腹部のちょうど盲腸の上の位置にどうやっても入り込むことが出来ない物・・。
 小さな指が、内臓を引っ掻くように埋まっていたのである。警察も監察医も訳が解らずどう対処していいのかさえも断定出来ないでいた。
 ただ自殺や自然死だけではないと言うことが、関係者全ての同意見だった。理由はなくても、ただ漠然とそう感じていた。
 その為家の周りには何か手がかりを探す警察が常時ついていたのであった。警察の目を抜けながら朝奈は帰ってきた。もう何日も家の中に閉じこもっていた朝奈はその厳しい視線が恐ろしかった。
 買い物から帰ってきて静かに家に入ると、買った物を冷蔵庫に押し込んでから父親の部屋へ入った。
 いなくなってからもそのままにしてあった部屋は閉め切ってあったので少し黴くさく感じた。
その部屋の中に「真夜」に関する物がないかと何度か朝奈は探っていた。だがそれらしきものはでてこない。
手がかりは父と一緒に戻ってきた小さな鞄の遺品のみだった。

 朝奈は「真夜」に会った次の日から鞄を毎日の様に調べたが、出てくるものは変わることはなかった。財布(カード、札、小銭、テレカ)タバコ、ライター、ペン、タオル、そして一枚のフロッピーディスクだ。
 朝奈はパソコンを使うことが出来なかったので唯一重要な手がかりになりそうなフロッピーはどうしようも出来ずに困っていた。
だが今日久しぶりに太田衣子からの電話で、衣子の友人に手伝ってもらえるように話を決めたのであった。
 朝奈はフロッピーを ケースごとポケットに入れると他の中身を元の通り片付けて部屋から立ち去った。
 ポケットの中のディスクが本来の重量より重く感じられた。

 部屋に戻る為に階段を上ろうとした時、母親の声が聞こえたのだった。朝奈は足を止め、声のする部屋の方へと引き返すと母親後ろ姿か目に入った。
 もともと大きくない体を半分に折りなにかボソボソと話している。母親に気づかれないようにそっと様子をみて朝奈はゾッとした。
 母は父の写真を見ながら何かを呟いている。相手はだれも居ないはずなのに目の前に父親と会話している様に話して笑っていた。父親の死語笑顔を全く見せないでいた母親が、良くは見えなかったが確かに笑っていたのであった。


 部屋に戻るとフーっと大きくため息をついた。
(母には相談できない・・・自分でやるしかないんだ、最後まで・・・。)
  部屋のドアにもたれかかりながら遠くを見つめる。
「最後なんて、あるのかな・・・・・」
それが本音だったのかもしれない。朝奈はボソッと小さな声で呟いた。



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