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2006年6月25日 (日曜日)

第7回(3)

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                 7-3

唖然とするしか出来なかった。
「っ・・・って事はだ。」
本条から話をきいた、麻十城は許容範囲を大幅に超えた内容にどう対処していいのか解らなかった。
当の安藤は顔を伏せているだけだった。
「昼間、保健室に来たのは、その『真夜』って事か?」
「まあ、自然に考えればな、こっちは保健室には行ってないって言ってるんだから・・・」
確かに言われてみれば、雰囲気はかすかに違うかもしれない・・具合が悪そうにうなだれていたので、今よりもう少しだが、色気見たいのがあった様な気もする。だが、それは言われてみればの話だ。普通ならそんなことは解らないだろう。
 それが、目の前にいる安藤の他にもう1人同じ人間がいて、なおかつその人間(?)は父親である人物によって作られたクローン体の可能性が有るらしい・・・。
「で、さっそくだが、麻十城センセ、このFDに書いてあった事なんだけど・・・。」先生と言う敬称は付いているものの、麻十城に話す、本条のしゃべり方は尊敬の意志は見えず、自分と同じ立場の人物の用に思える。
 麻十城も、そういう良識を持ち合わせていないのか、なんら変わる様子も無かった。近くで2人のやりとりを聞いている朝奈だけが目を白黒させていた。
「クローンの作成方法は何種類かあるんだ。大きく分けると3つの部類に分けられる」

 麻十城はなるべくわかりやすいようにクローン技術についての説明を始めた。

クローンの作成方法は大きく3種類にわけられる。

・胚分割によるクローニング
これは、1つの受精卵を4つに分裂するまで培養し、分裂したものをバラバラにして、子宮のなかに戻す。
「一卵性双生子」という状態になる。(ただし、この場合4つ以上に分裂させると正常に成長しないので、最大4つまでのクローニングとなる。)

・受精卵核移植
核分裂期になった受精卵を酸素をつかって分裂している核の1つ1つに切り離す。
(この時切り離された1つ1つの核を胚割核という。)他の未受精卵からピペット(スポイト)を使って核だけを取り除き、先程切り離した胚割核を埋め込む。
だがこのままではまだ、融合していないので電気ショックを与えてから、代理母となる子宮に戻すというクローニング方法

 今まで知っていたものはいかにいい加減で曖昧なものだったのかと言うことを本条は思っていた。
曲がりなりにも、自分は化学に関しては秀でたものを持っていると思っていた。
だが、専門的にはまだまだ足りないのだ・・・。もちろん、安藤の事も気になってはいたが、麻十城の話を聞いている自分は単純にこの技術的な内容をもっと知りたいという欲求に駆られていた。

 ちらっと朝奈の方をみると、視線はななめ前に座っている麻十城の方を見てるが、その表情は困惑な色を浮かべていた。まあ、一般的には興味の無い事だから、さらっと話を聞いただけ理解しえるとは思えない。ただ、自分の身に降りかかっていることなので、朝奈は食い入るように聞き込んでいた。

麻十城は本条の様子にかまわず話を続けた。
「で、もっとも有名で多分話の流れからいくと、『真夜』はこの方法でクローニングされたのではないかと考えられる。だがあくまでそうであった場合の話だが・・・」

白い紙にボーペンで書きながら説明をしている。

・体細胞核移植
と書かれその文字をつつきながら話を続けた。

「まず、コピー元となるものから、乳腺、皮脂組織などから、体 細胞を切り取るんだ。この切り取った状態では皮脂細胞なら皮脂細胞になる遺伝子しか活動していないので利用できない、
 そこで、細胞を培養するのに必要な20分の1の培養液で培養する。そうすると活動休止状態になり、データが初期化され今まで眠っていた別の遺伝子まで活動を始める。
 そうしたら、未受精卵に埋め込む。この場合だと他の二つに比べて制限がなくなる。未受精卵を用意できるだけクローニングが出来るって方法さ。」

麻十城はしゃべり続けて乾いた喉に本条の飲み残したコーヒーを流すと、椅子に座り直し、今度は朝奈の方を見ながら話だした。
「いままでの話の流れからすると、君の父親は双子で産まれてくるはずだった子供の指をつかって、クローニングに必要な核を作成したと考えられる。あのFDに入っていた研究報告の内容はその後の経過が記されてある。」
朝奈は、その話を確認するかのようにうなずいた。
「今の化学では、受精した卵子を子宮に戻してクローニングしている。代理母という奴だ。試験管の中で受精したと言っても結局は人間の母胎が必要になってくる。もちろんそれは君の父親も同じ方法を取っている。って事はだ・・・。」
麻十城は、目線を朝奈から本条に移動すると促すよな視線を送った。
その合図に会わせるように本条が口を開いた。
「『真夜』を育てた人物がいるってことだ・・・。」
にやっと麻十城はほくそ笑んだ、朝奈はハッとした様子ではいたが反応することは出来ていなかった。
唖然とする朝奈をよそに、麻十城は話を繋げる。
「そう、卵子からある程度まで成長させるには子宮が必要になる。どこかに『真夜』を産んだ女性がいるはずだ。」

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