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2006年6月27日 (火曜日)

第9回(2)

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             9-2


「99.9%ね・・・・」
(ほとんど、同一人物か・・・)
麻十城は椅子にもたれ掛かりながら電話をしている。
その電話は学校のものなのだから、私用電話は禁じられているが、ここは職員室ではなく、保健室という自分の特別な空間なので、人の目を気にしないで堂々たる態度で話をしていた。
「入手先・・・?」
 受話器の向こうの相手、大学時代の同輩の真田恭子は自分の渡した粘液の入手先が気になっているらしい、麻十城はどうしたものかと一瞬ためらったが、話すことはやめた。
「まあ、おいおい説明するよ。そのうち協力してもらわなくちゃいけなくなると思うしな・・・」
恭子のふてくされた返事を聞きながら、苦笑した。
 大学の同輩が、この地区担当の監察医になったと言うことは、卒業した時点でしってはいたが、まさか自分から連絡をとるとは思っていなかった。
恭子の顔は、好みだったが、性格が男勝りだったので、どうも、馬が合わなかった。まあ、会話もそれほど交わしたことは無かったので、自分にとって対して重要な存在の人物ではなかった。
 その女性とこうして自分からアポイントをとり再会するなどとは、あのときは考えもつかなかっただろう。
「また、連絡するよ。」
といって受話器を置いた。

 パソコンの前にすわると、スクリーンセーバーに変わっていた画面を直すためマウスを動かした。
「同一人物ね・・・・」
麻十城は明るくなる画面をみながらボソリと呟いた。
 画面は例のフロッピーの中身が映されている。手慣れた様子で画面をスクロールさせると、ある画面で動きを止めた。
 目の前の画面には受精後10週目と思われる胎児のエコーが添付してある。その写真を拡大した。と、麻十城はあるものに気づいた。
「イニシャル・・・?」
写真(エコー)の隅に小さく、日付とともにサインらしき文字が書かれてあった。
「H.A・・・ねぇ・・・・。」
麻十城は画面を見つめながら呟くと少しの間じっと動かなかった。

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