« 第9回(6) | トップページ | 第10回(1) »

2007年2月16日 (金曜日)

第9回(7)

                     9-7

 窓の外はもう暗くなっていた。
腕時計をこっそりみると針は7時を少し進んだ所だ。

 麻十城先生が連れてきた真田恭子と言う人は朝奈にとって苦手なタイプの人間だった。
ハッキリ物事を白黒つけたがる人物は、曖昧な朝奈にとっては苦痛にも似た圧迫感を感じていた。
さっきも目が合ったが、視線がきつすぎて直視できずにすぐに目をそらしてしまった。
失礼だったかなとは思ったが本心には逆らえなかった。

「なあ安藤。真田さんにも話すべきだと思うんだけど・・・」
本条がジッと固まって動かない自分の近くに来て小さく耳打ちした。
朝奈は伏せていた顔を小さく上げると、本条を見た。

 朝奈は不安だった。それは『真夜』のことが予定外に外に漏れているということがだ・・・。
本来なら自分の範疇で片づけたいことだったが、1人ではどうすることもできない。
そこで最小限の人間で調べたかった。
人数が多くなれば多くなっただけ利点は増える事は分かってはいるが、その反面口外される恐れがあった。
ふとした時についついが、どれだけ広がるか・・・朝奈は考えると怖かった。
もしこのことが母の耳に届いたら・・・今の生活がこれ以上犯されるかもしれない。
これ以上母を壊すことはできない・・・・・。

  朝奈はじっと考えると、隣で返事を待っている本条の顔をみた。
「信用していいのかな・・・・。」
「・・・それはどうか分からないけど、進にはリスクも考えなくちゃいけないんじゃないかな。」
「そう・・・・だけど・・・」
会話が止まる。少しの間沈黙が続いた。朝奈は本条の言葉を頭の中で繰り返してみた。

゛進には少しのリスクも必要 ″

繰り返し頭のなかで木霊している。
少し踏み出す勇気が自分には必要なのかもしれない、そう思うと今までの自分はまだ何していないのではないか・・・そう思えてきた。
いつも人に頼ってばかり・・・とは思ったところで、人間すぐ自分を変えられるなら、どんなに楽かもしれない。
朝奈は手をギュッと握ると、本条の顔はみないで、頷くだけの、了解の返事をした。
「サンキュ・・。」
朝奈の精一杯の努力に気付いた本条は、優しく微笑むと、握られた手をそれより大きな掌で、軽く包んだ。
 真っ赤に染まった朝奈から、離れると、本条は麻十城と会話が途切れている事を確認をすると、恭子に説明を始めた。

|

« 第9回(6) | トップページ | 第10回(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/120508/5361449

この記事へのトラックバック一覧です: 第9回(7):

« 第9回(6) | トップページ | 第10回(1) »